こんにちは!歯科医師の村瀬玲奈です。
今年の夏は猛暑で、冷たいアイスやかき氷を食べる機会が多かったのではないでしょうか?
でも、冷たいものを食べると、歯がしみるという人もよくいらっしゃいます。
冷たいものを思い切り食べたくても歯がしみるから、食べられない人も少なくありません。
この「歯がしみる」原因は主に2つ考えられます。
ひとつは虫歯が進行して、神経が過敏になっていること。
もうひとつは「知覚過敏」です。
Dentaluxe社との共同アンケートによると、日常的に歯がしみるという方は37%とおよそ4割の人が感じている知覚過敏。
その原因について詳しくご紹介していきます。
歯がしみるのはなぜ?歯の構造と痛みの原因
口の中をのぞくと、歯茎から目に見えている歯の部分を「歯冠(しかん)」と言いますが、この歯冠は三層構造でできています。
表面から歯の内部に向けて「エナメル質」「象牙質(ぞうげしつ)」「歯髄」という構造になっているのです。
エナメル質は歯をコーティングする役割を持っており、歯の表面を覆っています。
このエナメル質は本来、水晶くらいの硬さを持っていますが、酸に簡単に溶けてしまう性質を持っています。
本来口の中は弱酸性から中性に保たれていますが、飲食物や虫歯菌の影響で、酸性に傾くと歯が溶けてしまいます。
特に酸を含む食べ物や清涼飲料水は、口の中の唾液が酸性となり、エナメル質を溶かしてしまうのです。
また、虫歯の原因となるミュータンス菌は、飲食物に含まれる糖質をエサにして、酸を作り出します。この酸によってエナメル質が溶けるのです。
このエナメル質が失われてしまうと、歯の主成分である、「象牙質」に刺激が届くようになってしまいます。
象牙質に刺激が届くと、神経や血液が通っている「歯髄」に刺激が伝わるのです。
この伝わった刺激が「歯がしみる」状態、つまり知覚過敏といいます。
知覚過敏は
- 冷たい食べ物や飲み物がしみる
- 熱いも食べ物や飲み物がしみる
- 甘いものや酸っぱいものがしみる
- 冷たい空気がしみる
- 歯を磨くとしみる
という刺激と自覚症状が現れます。
こうした知覚過敏になると、歯ブラシで磨くことも刺激になって磨くことが嫌になったり
丁寧に磨けないことから、さらに虫歯を悪化させたり、歯周病を引き起こす原因にもなりかねません。
エナメル質が失われる原因は?
原因はほかにも考えられますが、大まかに分けてエナメル質は「虫歯」と「知覚過敏」によって失われてしまいます。
虫歯の場合、口の中に住むミュータンス菌という虫歯菌の作る酸によって、エナメル質が溶かされます。
虫歯は進行していくと、エナメル質だけでなく、象牙質も溶かしてしまいます。
象牙質が溶かされると、歯髄に刺激が届きやすくなり、冷たい水や風などのちょっとした刺激でも「歯がしみる」ようになってしまうのです。
虫歯ではない知覚過敏は、普段の歯磨きの仕方によってエナメル質が失われてしまいます。
その原因についてさらに詳しくご説明していきます。
知覚過敏の原因
その① 歯ブラシ選び方と使い方には注意が必要!
知覚過敏になるのは、歯ブラシが原因のひとつです。
アンケートでは、毎日歯磨きを行っている人を対象としたアンケートでは、「自分の手で動かすタイプの歯ブラシ」を使っている人は84.5%
と、大多数の人が手用歯ブラシを使っていることがわかります。
手軽で安価、持ち運びしやすく種類も豊富だから、手用の歯ブラシを選ばれる方も多いですね。
しかし、手用歯ブラシを使っている場合、力を強く入れすぎてしまい、歯を傷つけてしまうこともあります。
歯ブラシを使う場合、利き手や持ち方で力が入りやすくなることもあります。手で磨く場合には歯の凹凸部分や、隙間や歯の重なっている部分など、角度を変えたり、持ち方を変えたりしないと、磨き残しがある場合も。
手用歯ブラシを使って歯を磨く場合には、歯ブラシの持ち方や力加減に気を付けて、丁寧な歯磨きを行うことが大切です。
また、手用の歯ブラシを選ぶ場合には、歯のサイズに合ったものや毛の硬さなどにも注意しましょう。
昨今さまざまな電動歯ブラシが販売されています。アンケートでは電動歯ブラシを使っている人は13.3%でした。
手で動かす歯ブラシより、電動歯ブラシの方がきれいに磨けるというイメージがありますが、機種や使い方には注意が必要です。
一般的に入手しやすいのが外国製の歯ブラシですが、歯が丈夫な欧米人向けに作られているものも多く、出力がパワフルなものが多いのです。
日本人は欧米人に比べ、歯が弱いので、外国製の電動歯ブラシを使うと、エナメル質を削ってしまう可能性が高いのです。
その② 研磨剤入りの歯磨き粉で歯を削ってしまう!
市販の歯磨き粉のほとんどに、研磨剤が含まれています。
この研磨剤は、歯の表面についた、歯垢や着色などの汚れを落とす役割があります。
この研磨剤で磨くことで白さや輝きが増すのです。
しかし、ステンレスの流し台を研磨剤でこすると表面に細かな傷ができるように、歯磨き粉を使うと、歯のエナメル質も傷がついてしまいます。
歯磨き粉に含まれる研磨剤は細かな粒子でできているから、気づかないうちにエナメル質を削り取っていることになるのです。
その③ 「欧米人向け電動歯ブラシ」と「研磨剤入り歯磨き粉」でダブルパンチ!
堅いエナメル質を削ってしまう恐れがある「欧米人向け電動歯ブラシ」と「研磨剤入りの歯磨き粉」を一緒に使っている場合、エナメル質がさらに削られてしまう可能性が高くなります。
エナメル質は削り取られてしまうと、再生することはありません。
そのため、むき出しになった象牙質が虫歯菌にさらされてしまい、虫歯にもなりやすいという結果になるのです。
すでに「歯がしみる」と感じているのに、「外国製電動歯ブラシ」と「研磨剤入り歯磨き粉」を一緒に使っている場合には、自分で歯を削ってしまう可能性が高まります。
電動歯ブラシと歯磨き粉を選ぶ時には、注意が必要です。
知覚過敏予防には、日本人に合った電動歯ブラシがお勧め
電動歯ブラシを使うメリットは
- 歯の表面についた歯垢をきれいに取り除くことができること。
- 手用歯ブラシでは届きにくい場所にも磨き残しなく、全体を磨くことができること。
- 歯磨きをする時間が短くて済むこと。
が挙げられます。
こうしたメリットを最大限に生かせて、しかも日本人の歯に合った電動歯ブラシを選ぶことで、虫歯はもとより知覚過敏の原因を防ぐことができます。
また
電動歯ブラシと一緒に使う歯磨き粉も
- 研磨剤入りでないものを選ぶ。
- 研磨剤入りの歯磨き粉であれば、少量使う(ご飯粒程度の大きさ)。
など、歯の表面を削り取らないような工夫が必要です。
歯の表面や歯間の汚れを簡単に落とせる、電動歯ブラシを上手に使って、これからの歯磨き習慣に役立ててみてはいかがでしょうか。
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