秋も深まりつつある11月に、長野県へ旅行に行ってきました。この旅の目的は何と言っても「栗」!栗好きな私にとっては、必ず行ってみたい場所が長野県上高井郡小布施(おぶせ)町にあります。
ここは「栗と北斎の街」として有名です。特に栗の収穫期の10月半ばまでは、その年に採れたばかりの栗の味を求めて、栗菓子店の前では朝6時頃から長い行列ができるのだとか。紅葉の季節の長野旅行。どんなお菓子と出会えるのか楽しみです。
旅行の始まりは長野駅から歩いて善光寺参へ
東京駅から北陸新幹線で1時間20分ほど。長野駅舎は、木材がふんだんに使われた気持ちの良い駅ビルです。東京に比べると明らかに気温が下がり、ピリッとした空気の中を善光寺へ向けて歩きます。
長野県の寺院、善光寺参りが観光のスタート。
長野駅から徒歩20〜30ほどの所にある善光寺は、昔から「一生に一度は善光寺参り」と言われるように、日本人ならいつかは訪れてみたいお寺のひとつです。神社と違って鳥居は無く、代わりに立派な仁王門がありました。
仁王門を抜けると、参道の先に山門が見えます。山門とはお寺の正門のことで、古くは寺院の多くが山の側に建てられたことにその名の由来があります。
背後に山々が広がる、山とゆかりの深い善光寺山門の歴史は古く、現在のものは江戸時代中期の寛延三年(1750年)に建立された国の重要文化財です。その高さもおよそ20メートルと堂々とした佇まいです。
現在の本堂は宝永四年(1707年)の再建で、江戸時代中期を代表する仏教建築として国宝に指定されています。善光寺は、念仏を唱えて一心に祈る者は誰でも極楽浄土に導いてくれると言う、男女平等の救済を説く寺院として知られていました。そのため、昔から女性の参拝者が多いことが特徴だったそうです。
「荘厳」と言う言葉がぴったりな木造建築に時間を忘れて見入ってしまいました。神社とは違う、色を使わないのに迫力があり、趣を感じさせる建築は来る人を惹きつける魅力があります。
本殿の前には香炉がありました。焼香(香)は、自らの心身の穢れを落とし、清らかな心で祈りを捧げる為の下準備だそうです。寺院でお参りするときや、仏壇で手を合わせるとき、香の薫りとともに気持ちも落ち着き、静かに祈りを捧げる手助けをしてくれます。
大人になってから訪れた善光寺は、子どもの頃よりもずっと心に染みてきました。またいつか訪れたいなと思わせるお寺です。
2日目は栗の街「小布施」へ向けて出発
次の日の朝は、栗三昧な食事を楽しむために、長野電鉄に乗って小布施へ向かいます。こちらの列車はかつて小田急線のロマンスカーとして走っていた電車だそうです。2階にある運転席の下に広がる14席の展望席から見る信州の風景はまた格別で、常に人気なのだとか。レトロな外観や内装も旅の期待を高めてくれます。
天気が良く、電車からの眺めは最高でした。山々に囲まれている長野県の地形がよくわかります。窓からはすぐそばにリンゴ畑や栗畑が。外の景色を眺めること25分ほどで、目的地小布施駅に到着です。
なぜ小布施が栗の町として有名かというと、江戸時代後期に栗ようかんが、明治期に栗かのこが、小布施で創作されたそうです。これらの伝統的な栗菓子には、砂糖や寒天以外、小豆などは使わず栗だけで作られるのが小布施流とのこと。これは楽しみです。
洋菓子専門店「栗の木テラス」で絶品のモンブランを!
人口約1.1万人で、長野県で広さが最小の町である小布施には、年間100万人以上の人が訪れるそうですが、栗の収穫期の10月半ばまでは、美味しい栗を求めてさらに多くの人で賑わうそうです。
この日も連休中とあって街は大にぎわい。1時間待って入ったこちら「栗の木テラス」でモンブランと栗の紅茶をいただきました。甘さが程よく、栗の香りがしっかりします。中に生クリームが入っていたのにあっさりしていて、たちまちペロリと食べてしまいました。
北斎館では葛飾北斎の歴史と作品をじっくりと鑑賞
食後には街を散策しながらお目当ての「北斎館」へ向かいます。ここ小布施は、葛飾北斎が80歳を超えてから何度も訪れ、晩年の傑作を生み出した街としても知られています。
小さな美術館ですが、それだけ間近で北斎の作品を見ることができ、北斎の人生を描いたドキュメンタリー映画もとても面白いものでした。80歳を超えて東京から長野まで歩いて旅をした北斎。その目に見えていた景色を、たくさんの作品の中に見ることができました。
ランチは桜井甘精堂の「栗おこわ」
北斎館を後にしたら、目の前にある北斎亭で昼食です。こちらは創業200年を誇る老舗の「桜井甘精堂」の店舗でもあり、名物の栗おこわを食べることができます。ほんのり塩味が効いたもち米に、ホクホクの栗が美味しかったです。
こちらも予約は必須。祝祭日などの人出の多い日には、予約無しでは1時間以上の待ち時間は軽くかかるそうですよ。
タクシーの運転手さんおすすめの「岩松院」で北斎の天井絵を見る
食後にはこちらも今回のメインイベントのひとつ、葛飾北斎が最晩年に手掛けたという大間天井絵を見に行きました。タクシーの運転手さんも「ここを見ずに小布施から帰るわけには行かないよね」と言うほどの場所です。
歴史を感じさせる仁王門が印象的です。こちらの天井絵は、北斎が数え年89歳の時の作品と言われています。21畳分の天井絵「八方睨み鳳凰(はっぽうにらみほうおう)」は、天井の真下に観賞用の椅子が置かれており、顔を上げてその絵をじっと見つめることができます。
写真を撮ることは禁じられていたので、興味のある方はこちらをご覧ください。→葛飾北斎最晩年の作品がある岩松院
古い建物を移築改修し、町の景観を整えている小布施には、派手な看板や自動販売機は見当たりません。それだけ町の人々が、こだわりの町作りをしているのがよくわかります。
長野の旅を思い出しながら、絶品「栗ようかん」にまた感動
帰宅して旅の間に買い求めた栗羊羹をいただくことにしました。飲み物は栗の木テラスで買った栗の紅茶です。これがまた美味しかった!栗だけで作られた正真正銘の栗羊羹。栗好きの私も思わず唸った味でした。
長野県には有名な観光地がたくさんありますが、何かひとつにテーマを絞って行く旅も楽しいものだなあと、栗紅茶を飲みながら思ったのでした。
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