先日、高齢の父が肺炎のため高熱を出し、救急車で運ばれるという経験をしました。その数日前から足腰が立たなくなったり、トイレを失敗したり、転んで立ち上がれないことが増えていました。トイレは急遽オムツなどを用意して対処していましたが、体が大きく何しろ重くて立ち上がらせるのにも一苦労。それまでは自分で食事もトイレも済ませていた父。出来なくなる日が来るなんて思いもしませんでした。しかも介護未経験の私たちは、大人用オムツがあることも、その使い方も全く知りませんでした。
介護は或る日突然やってくるのだということを、今回身をもって経験しました。両親世代が毎日を健康に過ごせているうちは、介護に関して考えることなど全くありません。でも、いざ自分や家族を介護しなければならなくなった時、それまで知識がなかったことを本当に後悔することになります。健康なうちに介護に関する情報を仕入れておくことが、とても大切だなと思いました。そんな介護初心者の私の体験記をご紹介します。
病院は認知症を介護してくれる場所ではなかった
急性肺炎のため、救急車で搬送された病院で治療を受けた父。安静の為、食事の時以外は、一日中ベッドから起き上がらせてもらえませんでした。病室のすぐそこにトイレがあるのに、歩いていくことは許されず、オムツをされる日々。それまで軽度の認知症程度だったのが、体を動かさないこと、トイレに行けないことで、いきなり症状が進行してしまったように見えました。
入院先は総合病院なので、認知症専門というわけではありません。看護師さんも次々とやってくる患者の世話に忙しく、なかなか見回りにも来てくれない状況。そんな中、母が見舞に訪れる時以外は、父はベッドの上で天井を見つめているしかなかったと、後で母から聞きました。救急で運ばれた時に、医師から「最長2週間という期限で入院は終了します」と言われました。だからそのあとのことも考えておいてくださいと。病院は介護の場所とは違うのだということを知りました。
認知症の父の介護度を知ることから始まる
数年前から認知症を患っていた父は現在要介護1と認定されています。介護サービスの利用には、要介護認定(または要支援認定)を受ける必要があります。介護度とは、その人の状態で判定される介護の必要性の程度等を表します。突然の事故や病気で介護が必要になったとしても、介護サービスはその日から受けられる訳ではなく、事前の準備が必要なのです。
要介護認定の手続きは
■病院での検査で、認知症あるいはその疑いが強いと診断された場合、今後のケアをおこなっていくために、介護保険の申請をする
■介護保険の申請は、住まいのある市区町村の窓口(福祉課など)でおこなう
■申請が受理されると、役所の担当者が自宅を訪れ、本人に聞き取り調査をし、その調査結果と医師からの主治医意見書をもとに介護認定が下される
■申請から認定までの期間は約1か月ほどかかる
介護保険の適用が認められれば、通所介護(デイサービス)や短期入所(ショートステイ)などのサービスや、福祉器具のレンタルを少ない自己負担で受けることができます。
要介護度が判定された後で、ケアマネジャーが作成するケアプラン(介護計画書)に沿って介護サービスの利用が開始されます。要介護度によって、受けられる介護サービスは異なります。
地域包括センターからケアマネージャーを紹介してもらう
介護をしようとするとまず耳にするのが「地域包括センター」という名前です。これは、介護・医療・保健・福祉など、さまざまな視点から高齢者を支える「総合相談窓口」のことを意味します。
地域包括支援センターは、市区町村から受託された医療法人や社会福祉法人などによって運営されており、 勤務するスタッフは、社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)といった「介護のプロ」ばかりです。ここに電話して父の状態を説明し、知識のあるケアマネジャーを紹介してもらうことになりました。とても親身に聞いてくれてありがたかったのを覚えています。
良いケアマネジャーと出会えれば介護の質が上がる
ケアマネジャーとは、介護保険制度に基づいてケアマネジメントを行ってくれる人のことを言います。正式名称は『介護支援専門員』ですが、一般的には「ケアマネージャー」または「ケアマネ」などと呼ばれています。
地域包括センターによって紹介されたケアマネジャーが、父の現在の体調を見て、病院から退院後に移る場所はどこにしたら良いのか、リハビリはどの程度したら良いのかなどの計画(ケアプラン)の作成や、自宅で過ごす際の補助道具(ベッドや手すりの設置)の手配をしてくれます。この時悩みや質問をしっかりとまとめ、どのような生活を父のためにに望んでいるのかをケアマネジャーにはっきりと伝えることが、その後の介護の質を大きく変えていくのだと知りました。良いケアマネージャーに出会えたことで、母の表情も明るくなったのを覚えています。
いつかやってくるその時のために意識をしておきましょう
ひとくちに「介護」といってもその内容は様々です。その人がどんな状態なのかによっても受けられるサービスが変わってきます。すべて家族で負担したために、介護をする人が疲弊してしまわないように、デイサービスや訪問介護などの自宅や施設で受けられるサービスを利用することは必須です。また、福祉用具の貸与、住宅改修費の支給等のサービスなど、介護には多岐にわたる種類が存在しています。
介護をする人は、介護をされる人にとって最適な介護サービスについて理解すること、そしてわからないことはケアマネジャーなどに相談し、少しでも知識を増やしておくことが大切だと思いました。ある日突然、何の前触れもなく直面しなければならなくなるのが介護だと思います。介護を受けたくても、施設などは3か月待ちなどが一般的で、明日急にデイサービスを利用したいということはできません。そのため、急を要する事態が起こった時に、その前から準備していた知識や人とのつながりがとても重要になってくるのです。
親世代が70歳を超えているなら、いつでも介護に対応できるよう準備を整え、知識や情報を身に付けておくことが本当に大切なのだと、今回のことで思いました。介護は始まったばかり。いつまで続くかわかりません。それでも少しでも両親が心穏やかに暮らせるよう、これから私も介護に関わっていこうと考えています。
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