「有田焼」の街、佐賀県有田町を訪ねて

やきものの街。佐賀県有田町は、安土桃山時代に豊臣秀吉の朝鮮出兵を機に連れてこられた朝鮮人の陶工によって、日本で初めて磁器生産に成功した場所です。ため息の出るような繊細な芸術品から、日々使える器まで。美しい色や絵柄の入った数々のやきものをじっくり見学してきました。

やきものとの出会い

九州に暮らし始めて以来、折に触れ出会う「やきもの(陶磁器)」の種類の豊富さに驚いていました。それまで子育てで忙しく、日々使う食器は実用性の高いもの優先。割れてもすぐに買い足せるようなものばかり使ってきました。そのためゆっくりと陶磁器と触れ合う余裕がなかったのですが、子育てもだいぶ終盤にさしかかり、ここ数年急にむくむくと「やきもの」への関心が高くなった私です。

そんなある日、私の住む福岡県のお隣である佐賀県に「佐賀県立九州陶磁文化館」というものがあることを知りました。ここは県が運営する無料の博物館であるにもかかわらず、その展示数は非常に多く、陶磁器の歴史や素晴らしいコレクションも見ることができる場所です。やきもののことを知るにはまずは勉強から。ということで、出かけてみました。

休日だったにも関わらず、ほぼ貸切状態の館内。歴史ある有田焼の数々を、ガラスに顔を近づけて凝視してきました。陶器と磁器の違い、九州の陶磁器の歴史などをパネルとともにじっくり読みながら見ていきます。こういった博物館で詳しい解説をじっくりと読み込む楽しみは、興味があるものだからこそ。静かな館内で時を忘れて見入ってしまいました。

陶器と磁器の違いとは

陶器と磁器は総称として「陶磁器」「焼き物」「瀬戸物」「唐津物」などさまざまな呼び方をされますが、陶器と磁器では製造方法に違いがあります。

陶器

材料に陶土(粘土)を使い、1100~1300°Cで焼いたもので「土物」とも呼ばれています。磁器に比べて柔らかく吸水性がありますが、仕上げに光沢のある釉(うわぐすり)を施すため、水を通すことはありません。厚手で重量があり、熱しにくく冷めにくいのが特徴です。美濃焼、瀬戸焼、唐津焼、益子焼、信楽焼、萩焼、萬古焼、備前焼などが有名です。

磁器

材料に陶石を砕いた石粉を使い、1300°C程度で焼いたもので「石物」とも呼ばれています。焼きが締まってガラス化しているため、吸水性はほとんどなく、陶器に比べて硬いものがほとんどです。薄手で軽く、熱しやすく冷めやすい(熱伝導率が高い)という特徴があります。今回訪れた有田焼(伊万里焼)、九谷焼、砥部焼などが有名です。

陶磁器を見るために知っておきたい言葉

磁器には、絵付けに注目が集まります。シンプルな図柄から精密に計算されたような模様まで見ていて飽きません。製造過程でその技法に名前が付けられており、意味がわかるともっと見るのが楽しくなります。例えば染付と色絵。このふたつの違いを見ていきましょう。

染付(そめつけ)

素焼きしたやきものに色をつけることを染付と言い、下絵付けとも呼ばれます。染付では「呉須(ごす)」という青色の絵の具を使いますが、染付したものを再度焼くと、青色が藍色に変化します。

色絵(いろえ)

釉薬をかけて焼いた磁器に、赤・緑・黄・紫・青などの上絵具で色つけをして、低温で焼いて発色させたもののことをいいます。染付に比べて華やかなものが多いのが特徴です。

圧巻のコレクション

 

陶磁文化館の中には染付、色絵の歴史あるコレクションもたくさんで、江戸時代初期の素朴なデザインのものから、明治時代の華やかで洗練されたデザインまで年代順に見ていくことができます。

中でもこちらの蒲原(かんばら)夫妻のコレクションは、圧巻でした。有田町出身で名誉町民である蒲原権氏(1896~1987)が収集され、有田町に寄贈したものだそうです。今から約300年前に有田で作られ、ヨーロッパに運ばれた品々を集め、コレクションしていたのだとか。素晴らしい食器の数々に、時間を忘れて見とれてしまいました。

有田の街を見下ろす陶山神社

沢山の陶磁器を見て、歴史を感じた後は、有田の街を見下ろす神社へ向かいます。その名も陶山(とうざん)神社。江戸時代に有田町と有田焼の商売繁盛の守り神として建てられたそうで、急な石段を登った山の上に建っています。この神社の鳥居はなんと染付の磁器!そして狛犬も白磁(白素地に無色の釉薬をかけた磁器)で白さが際立つ神々しい表情が印象的でした。

陶山神社は、まさに磁器の街にふさわしい神社で見応えがありました。お詣りが済んだ後は、お守りを買って帰ります。何とそれも磁器のお守り!さすがやきものの街という感じでした。

古き良き時代の街並みにホッとさせられます

街のメインストリートを歩いてみると、さすが国の重要伝統的建造物保護地区に選定されているほどあって、歴史のある建物がたくさん残されていました。普段は観光客が来てものんびりとした雰囲気が漂う街ですが、毎年ゴールデンウィークに開催される「有田陶器市」には、いつもなら手が届かない器がセールになるということで、100万人以上の人出で賑わうそうです。

やきものの街には欠かせない「登り窯」ですが、こちらは江戸時代の登り窯のレンガを、廃物利用して作られた民家の塀で「トンバイ塀」として有名です。有田焼400年の歴史が感じられる人気スポットとなっています。

一度目は磁器の魅力を見ただけ。きっとこれからも通います

帰りに小さな豆皿を幾つか買い求めて帰宅しました。やきものの世界は奥が深く、伝統を大切に守り続けている有田町の姿勢にとても魅力を感じました。

まだまだ入口を見てきたばかりの今回の旅。次回訪れる時には、文化館の展示ももう少し理解できるのではないかなと思います。そして歴史のある街でもっといろいろな器に触れてみたい。そう思った今回の旅でした。

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新型コロナウイルスの影響で、マスクをする人がとても多くなっています。もちろんマスクは有効ですが、まずは手洗いとうがいの徹底が重要だと改めて感じています。あとは喉を潤わせておくことも忘れてはならないことの1つ。私はこの時期、いつも以上にお茶を飲んでいます。

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