それは偶然見かけたサイトでした。目に飛び込んできたのが「初めてのお灸体験会」の文字。以前から興味はあったものの、熱いんじゃないか、匂いがキツイんじゃないかと言う心配からもうひとつ踏み込めなかった「お灸」の世界です。
どんなにストレッチや運動をしても、長引く腰痛や肩こりは治りません。なんとかしなくてはと思っていたので、もしかしたらお灸が効果があるかもと、藁にもすがる思いで体験会に申し込みをしました。そこでは今まで知らなかったお灸の効能や、熱いものだと思っていたお灸は、ずいぶん進化していることを目の当たりにしたのです。そんなお灸体験会のレポートをお送りします。
お灸とは「気」「血」「水」のバランスを保つために行うもの
お灸は、人間の身体に点在する「ツボ」にもぐさを置き、火をつけて、あたためることで血行をよくし、自然治癒力を高めてカラダにおこっている症状を改善します。
お灸は、仏教とともに奈良時代に中国から伝えられたと言われています。今のようにレントゲンもMRIもなかった時代。身体の内部で起こっている症状を知るために手でカラダをさすったり、押したりしているうちに、カラダの中でおこる症状がやわらぐポイントがあることがわかり、試行錯誤をくり返したのち、完成されたのがお灸のツボなのです。
東洋医学では「気」「血」「水」と3つのバランスが互いに助け合ってスムーズに循環している状態が理想とされています。
【気】陽気、元気、気合い、眠気など気の付く言葉はたくさんあるように、気は人間の生命活動の原動力
【血】「気が巡れば血も巡る」と言われ、血は全身に栄養と酸素を運ぶ役割を持ち、気の移動によって血液循環が行われてる
【水】体内を満たしている水分のことであり、臓器、組織や皮膚、粘膜を潤わす役目もしている
この3つのどれかが弱まり、異常が発生すると、他の要素にも悪影響を及ぼして体全体のバランスが崩れてしまいます。
気が不足することを「気虚(ききょ)」と言いますが、様々な不快な症状が起こるのは「気虚」だからであり、その後「血」「水」の不足などの症状が現れ、体調が崩れます。このことから東洋医学では「気」の流れをコントールして整えることができれば、体のアンバランスを回復できると考えられています。
そして「ツボ」は「気」の入り口と言われており、ツボを触ったり押したりした時に痛みやコリが現れるのは、何らかの原因で「気」の状態が乱れ、体の内臓や器官に不調があるサインとされています。また、ツボと内臓器官を結ぶ気の流れる道が「経絡(けいらく)」と呼ばれるもので、それぞれ胃のライン、肝のラインなど、主要な臓器とつながっているのです。
体のどこかに異常が発生すると、必ずツボと内臓を結ぶ経絡にも反応が現れます。ツボを探してする「お灸」は、異常を感じているツボに刺激を与えることで、経絡を巡っている「気」の流れを整えることができるのです。ツボをケアすることとは、「気」の流れを整え、体のバランスを回復するための治癒力を高めることと言えます。
お灸の原料は「よもぎ」
お灸の「もぐさ」はヨモギから作られています。お灸をすえると、熱とともにもぐさに含まれる「よもぎ成分」が身体に浸透して「気」「血」「水」のバランスを整えるように働きかけてくれるそうです。もぐさは、ヨモギの葉の裏にある繊毛(せんもう)を精製したもの。外国では「moxa」として取り入れられています。もぐさを作るためには、5〜8月の夏場に、よく生育したヨモギの葉を採集し、臼でついたり、陰干ししたりする工程を繰り返して作られます。
よもぎは、古くから傷口に葉をもんで汁をつけて止血したり、虫さされやかゆみ止めなど身近な薬草として使われてきました。又、乾燥したよもぎは艾葉(がいよう)と呼ばれ、カラダを温めたり、腹痛、胸やけ、下痢、便秘などに効果があるなど、生薬(植物など薬効を持つ薬)として活用されてきました。
よもぎは、ヨーロッパでもひろく用いられており、人の暮らしの身近なところですぐに手に入るため、昔から私たちの暮らしに役立ってきた植物でもあるのですね。
体のツボを探してお灸をする
身体には、お灸用のツボが361あると言われています。その人の症状に合わせて気になるツボにお灸をします。例えば、腰痛のツボといえば、ふくらはぎのあたりの「三陰交(さんいんこう)」または内くるぶしのあたりの「復溜(ふくりゅう)」というものがあります。
腰が痛いのにお灸をするのは足なの?と思う方もいるかもしれませんが、経絡は全身を巡っており、また人間の体は頭より足先の方が血の巡りが悪いため、冷えがちだと言われています。そのため、まず足元を温めることで血の巡りが良くなり、経絡を回って身体全体が緩んで腰に効いてくるというわけです。
昔のお灸と今のお灸の違い
昔のお灸のイメージというと上の写真のように、もぐさをそのまま肌の上に置き、火をつけて燃やし、熱さを感じるまで待つというものが大半でしたね。いつもぐさが燃え尽きるかもわからず、熱くて怖いものと思われた方も多いかもしれません。現在もこのようなお灸は使われているそうですが、一般的に広まっているのはもっと安全で簡単に出来るものになっていました。
上の写真が現代のお灸です。こちらは火を付けるタイプ。台座の底にはシールが貼ってあり、それを剥がして患部に貼り、もぐさに日をつけます。シールが付いているので、少々傾けても大丈夫。
もぐさの量が少なく感じるかもしれませんが、もぐさが燃えることでしっかり台座が温まります。火をつけるタイプは4~6分程度で火は消えますが、温熱効果は持続するので台座が冷たくなるまでそのままにしておきます。「心地いい」と感じず「熱い」「チリチリとする感じがある」と思ったらすぐに取り除いたり、場所をずらすなどの処置をする必要があります。
暑さを感じやすいツボは凝っていないツボ、暑さを感じないツボは、それだけ冷えていて血の巡りも悪くなっている場所なのだそうです。他にもお灸には火をつけるタイプと火を使わないタイプがあり、カイロのように燃焼させずに貼り付けるだけで使えるタイプもあります。
実際に試してみました
お灸教室では、写真撮影が出来なかったので、家に帰って試してみました。もぐさはを使ったお灸は、ペットにもOKなので、部屋の中でペットが側にいても火の取り扱いさえ気をつければお灸をすることができます。
初心者なので万能のツボ「合谷(ごうこく」という、手の甲の親指と人差し指の間のくぼみにお灸を置いてみます。1日1回1〜3個程度が目安なようで、熱いと感じたら1個で終わり、まだ物足りないと思ったら同じ箇所やそのツボから500円玉1個くらいの範囲内で何度か繰り返してお灸をするのが良いとか。
お灸をすると、ツボが刺激されてポカポカと患部が温まります。そして次第に全身が温まってくる感覚があります。お灸を続けて美肌効果が上がった人や、タコや魚の目が取れた例もあるとか。私も腰痛改善のために毎日1回はお灸を続けていきたいと思っています。即効性というよりも、続けることで体質改善をしていくという考えの東洋医学。一度試されてみてはいかがでしょうか。
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